緊急事態宣言が全国で解除されてから3週間近くが経過し、皆様も徐々に日常を取り戻されていっしゃると思います。
しかし、気がかりなのは、世界的にはまだ感染拡大基調が続いていることで*、全世界的な終息が実現しないかぎり、国内の第2波・第3波といった感染拡大のリスクも残り続けることです。
まだまだ油断できない状況は続いておりますので、皆様も是非、引き続き感染予防にお努めください。
さて、コロナショックが続く中でも様々な動きがありましたが、検察庁法改正や種苗法改正がひとまず見送られたことは良かったのではないかと思います(本当に必要な改正なら、周知と議論を徹底的に行なった上で、改めて成立を目指せばよいだけです)。
しかし、かき消されてしまったニュースも少なくなく、例えば、
「スーパーシティ法(改正国家戦略特区法)の可決・成立」 *2
があります。
もちろん、報じられていないわけではありませんが、ニュースの件数自体が少ない上に、危険な側面を含めた詳細が、きちんと伝えられていないようです。おそらく、どのような内容なのかをきちんと知っている国民はとても少ないことでしょう。
むしろ「法案成立すら知らなかった」という方が少なくないかもしれません。
片山さつき地方再生担当相は、
「中国との協力」*3
に基づいて同法案を推進してきました。
ジョージ・オーウェルが1948年に発表した
『1984年』 *4
は、第三次世界大戦後、オセアニア、ユーラシア、イースタシアという3つの超大国に分割された世界の恐怖を描いたディストピア小説の名作ですが、現在の中国は、それを遥かに超える
「超監視社会」
です(ちなみに、『1984年』では、日本は中国と同じ「イースタシア」に含まれています)。
もちろん、「スマートシティ」が目指すのは、
「先進的技術の活用により、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、各種の課題の解決を図る」*5
ことなので、多くの利点もあるはずです。
それでも、技術やデータには、常に悪用の危険性がついて回ることを、忘れるべきではないでしょう。*6
ここで話をコロナショックに戻させていただくと、個人的にまずいと思ったのは、麻生副総理兼財務相の
「民度が違う」
発言です。6月4日の参院財政金融委員会における質疑で、
“ 他国の人から「お前らだけ薬を持ってるのか、ってよく電話がかかってきた」と明かし、「そういった人たちの質問には『お宅とうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだ』と言って、みんな絶句して黙るんですけれども」と語った” *7
というものですね。本当に外国人とこのようなやりとりがあったのなら、それだけでも驚くべきことです。野党議員は早速、ツイッターで噛み付いていました。
“ 貴方はどれだけ偉いのでしょう、麻生大臣。” (民主党・蓮舫氏)*8
“ 平気でこういう発言をするとは。そりゃ「みんな絶句して黙る」でしょうね。”(志位和夫・共産党委員長)*9
確かに、多数の犠牲者を出している相手国に対する無神経さも感じられますし、何より、政権幹部の発言として、決して上品とは言い難いものでしょう。
しかし、本当の問題は、「先進国中」では比較的に感染者・死者数を低く抑えることができたことの理由を、
「民度が違う」
などという抽象的な言葉で片付けてしまうことによる思考停止です。
いまだに世界で猛威を振るう病原体による被害が、幸いにも我が国において少なかったのは事実です。それでも、その要因はまだきちんと確かめられたわけではありません。
「マスクが感染予防に有効」 *10
という研究報告も出ていますが、実は、
「日本の死亡者数はアジアでワースト2」 *11
という事実もあるのです。
京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授は、感染者や死亡者の数が欧米より少なく済んでいることの要因を、
「ファクターX」 *12
と呼んで、明らかにすべきと主張されていますが、選択すべき姿勢は、まさにこれだと思います。
昨日成立した第二次補正予算も、決して十分なものとは言えないはずですが、17日で国会は閉会され*13、会期延長はない見込みです。
このまま、
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
となってしまうことが、何より心配です。
外食産業ではすでに
「閉店ラッシュ」*14
が起きており、深刻な経済被害の実態も、今後次々と明らかになってゆくことでしょう。
また、関東地方では6月9日に今年初めての「猛暑日」が観測されましたが、気象庁の「3か月予報」でも、今夏は昨年を上回る暑さになることが見込まれています。 *15
「マスクは熱中症のリスクを高める」*16
という注意喚起もあり、感染予防も難しくなるかもしれません。第2波・第3波の懸念は残り、まだまだ緊張を緩められる段階ではありません。
そして、最も重要なことは、コロナ対策の事後的な検証で、何が奏功し、何がそうでなかったのかをきちんと明らかにすることではないでしょうか。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
ようでは、次の悲劇を避けられなくなる可能性があります。
コロナショックを教訓とし、感染症対策の拡充や、財政政策の転換を図ることで、国家の安全保障を強固にしていかねばなりません。
それでは、また。
リアルインサイト 今堀 健司
【引用・参照元】
* Johns Hopkins Coronavirus Resource Center
*2 「スーパーシティ」整備 改正国家戦略特区法が成立(2020年5月27日・NHK NEWS WEB)
*3 スーパーシティ整備向け中国と協力 片山担当大臣(2019年9月13日・NHK NEWS WEB)
片山地方創生相、1月8日から中国視察(2018年12月28日・産経新聞)
*4 『一九八四年[新訳版]』(ジョージ・オーウェル著,早川書房,2009年)
*6 中国のとあるスマートシティ監視 システムのデータが公開状態になっていた(2019年5月6日・TechCrunch Japan)
*7 コロナ死者少ないのは「民度が違うから」 麻生太郎氏(2020年6月4日・朝日新聞デジタル)
麻生副総理 死亡率低さを指摘「国民の民度のレベルが違う」(2020年6月4日・NHK NEWS WEB)
*10 「マスクは新型コロナ対策に有効」 欧米で複数の研究報告(2020年6月12日・テレ東NEWS)
※動画です。
*11 「日本の死亡者数はアジアでワースト2」 ─新型コロナ対策に慶大・菅谷氏が警鐘(2020年5月21日・日本医事新報社)
*12 ファクターXを探せ!(山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信)
*13 2次補正予算成立 与党 17日国会閉会 野党 会期大幅延長求める(2020年6月13日・NHK NEWS WEB)
*14 外食で「閉店ラッシュ」、迫る経営破綻の危機(2020年6月13日・東洋経済オンライン)
3か月予報の解説(2020年5月25日・気象庁環境・海洋部)
*16 熱中症対策「マスク 屋外では状況に 応じ外して」新型コロナ(2020年6月9日・NHK NEWS WEB)
このメールマガジンをお知り合いにご紹介いただける場合は、こちらのURLをお伝え下さい。
【ザ・リアルインサイト無料版】
ご登録フォーム