いよいよ平成最後の年に突入しましたが、昨年12月に成立した「改正入管法」は今年4月の施行が予定されています。
今上陛下のご譲位で改元が実施されるのとほぼ同じタイミングで、日本は国の形を大きく変える一歩を踏み出すことになりそうです。
いまだに政府は
「移民政策ではない」
と強弁しているものの、外国人労働者の安易な受け入れがどのような事態を招来するのかを、徹底的に暴いた書籍があります。
以前から何度かご紹介してきた英国人ジャーナリストダグラス・マレー氏の著作、
“The Strange Death of Europe”(ヨーロッパの奇妙な死)
がそれなのですが、昨年12月に、いよいよ邦訳が刊行されました。
邦題は
『西洋の自死』※1
(ダグラス・マレー著,町田敦夫訳,東洋経済新報社)
です。
同書の巻頭には、ザ・リアルインサイトのインタビューや講演会にもご登場いただいている、評論家の中野剛志氏の解説が寄せられています。
ついに日本政府は、本格的な移民の受け入れへと、大きく舵を切ったのである。しかも、国民的な議論がほとんどなされぬままに、である。
『西洋の自死』
皮肉なことに、本書が日本で発売されるのは、本格的な移民受け入れのための出入国管理法の改正案が臨時国会で成立した直後、すなわち、日本の指導者たちが欧州の後を追って自死を決意した直後ということになる
(中略)
はなはだ遺憾ではあるが、我々日本人は、本書を「日本の自死」として読み換えなければならなくなったのである。”
という重すぎる指摘がなされています。
中野氏が、
“日本の自称「保守」は、マレーの爪の垢を煎じて飲むといいだろう”
とまで書いているとおり、確かに我が日本の最大の問題点は、最も強く抵抗しなければならないはずの
「保守勢力」
にすら、危機感が希薄であることなのかもしれません。
同書では、
- もはや取り返しがつかない欧州の現状
- 戦後一貫して続いた移民政策の歴史
- 未曾有の規模に拡大した移民の実数
- 2015年に移民受入れが急拡大した理由
- 報道されない「文明の衝突」
- 「リベラル」がもたらした自滅
- タブーとして黙殺される「宗教対立」
- 「欧州人」だけが持つ罪の意識という背景
- etc.
といった衝撃的な事実が、圧倒的な筆力で書き尽くされているのですが、その内の重要な指摘について、一点ご紹介させていただきます。
それは、
戦後の労働力不足を補うことを目的に、50年代から60年代に
「ゲストワーカー」
ドイツ語で言えば、
「ガストアルバイター」
のスキームを多くの国が競って導入したことこそが、現在の悲劇の発端だったという指摘です。
欧州の各国政府は英国政府とまったく同じ思い違いに苦しんだ。その最たるものは、初期のゲストワーカーが仕事の終了とともに帰国し、彼らの存在が一時的な現象に終わるものと思い込んだことだ。
『西洋の自死』P.55
この例のみならず、各国政府の目論見がいかに外れ続けたか、そして、様々な問題の発生が明らかになった後もこの流れが止められないのはなぜか、なぜ移民受入れの必要性についての“誤った”言説が、変遷しながら繰り返されるのか、といった重要な指摘が豊富に登場します。
今こそ、一人でも多くの日本国民が手にすべき書籍でしょう。
政府が「移民政策ではない」と強弁しつつ、大量の単純労働者の受入れを開始する日本は、数十年かけて「自殺」しつつある欧州すら追い抜いてしまいそうに思えるのすが、同書には、我が国についての言及はほとんどありません。
数少ない登場部分では、これまで国際的な批判を受けながらも、移民・難民に門戸を開いてこなかったことが称賛されているですが……
その後、我が国が凄まじい勢いで欧州の過ちをトレースし始めたことを知れば、マレー氏も深い絶望を覚えることでしょう。
しかし、手遅れになる前に抵抗を開始しなければなりません。是非、あなたも同書を手に取って下さい。
難しい方は、中野剛志氏が昨年刊行された
『日本の没落』※2
の第四章(リベラリズムの破綻)で同書の概要を紹介されていますので、そちらもご参考としていただけるでしょう。
それでは、また。
【参照・引用文献】
※1 『西洋の自死』(ダグラス・マレー著, 東洋経済新報社, 2018年)
※2 『日本の没落』(中野剛志著, 幻冬舎新書, 2018年)
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