全国的な雨のおかげで、今日は

「1か月ぶりの猛暑日地点ゼロ」*

となったようです。少しずつ涼しい日が増えてきてはいますが、やはりここ数年の夏の暑さには凄まじいものがありますね。

少なくとも、ヒートアイランド現象による気温の上昇が顕著な都心部の夏が年々暑くなっていることは確か*2

ですので、開催まで1年を切った東京五輪において、実効性のある「暑さ対策」がないという事実には恐怖を覚えざるを得ません。

東京五輪招致委員会は、大会日程について国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルで、

「晴れることが多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候

と記していた*3そうなのですが、今となっては、安倍晋三首相の

「アンダーコントロール」発言*4

同様に、虚しく響くばかりです。

その安倍首相の通算在任日数は本日時点で佐藤栄作元首相と並び、

「戦後最長」*5

となりました。11月20日まで政権を維持できれば計2866日の歴代最長記録を持つ桂太郎元首相も超えるということなので、おそらく

「史上最長」

となることも間違いないでしょう。2012年11月16日の第46回衆議院総選挙に勝利し、民主党からの政権奪還を果たすとともに、吉田茂元首相以来64年ぶりとなる

「首相再登板」

を果たした安倍総理が掲げた「財政金融」政策及び「産業構造」政策である

「アベノミクス」

は、当初大きな期待を集めました。私も、大いに期待を寄せた一人です。しかし、アベノミクスだけでなく、「投資」政策、「財政健全化」政策、「外交」政策といった、

「安倍政権の成果」

は、一体どのようなものだったのでしょうか。

第二次安倍政権発足時から昨年末まで内閣官房参与(防災・減災ニューディール政策担当)を務めた京都大学大学院教授の藤井聡(ふじい さとし)氏が、今年5月に

『令和日本・再生計画: 前内閣官房参与の救国の提言』*6

を出版され、「安倍政権の総括」を行っています。同氏は、2019年12月28日付で丸6年お務めになった内閣官房参与を辞任されました。

「アベノミクス」

自体の策定にも大きな影響を与えた人物が、ついに辞任を決断せざるを得なかった理由とはなんだったのか。一言で言えば、令和の御代の始まりに、遂に日本経済にとどめをさすことになるであろう世紀の大愚策、

「10%消費増税」

を阻止するための、

「言論戦」

を一層強化するために、政権内部から離れる必要があったということです。また、ご本人の言ではありませんが、

「事実上の解任」

であったと報じた*7左派系メディアもありました。

いずれにせよ、内閣のアドバイザー、いうなれば「知恵袋」を長くお務めになった人物が、このタイミングで辞任された事実自体、決して軽いものではありません。

藤井氏の総括の一つは、

アベノミクスは実施されなかった

というものです。お忘れの方も少なくないかもしれませんが、アベノミクスとは、

第1の矢 大胆な金融政策
  金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭 

第2の矢 機動的な財政政策
  約10兆円規模の経済対策予算によって、政府が自ら率先して需要を創出

第3の矢 民間投資を喚起する成長戦略
  規制緩和等によって、民間企業や個人が真の実力を発揮できる社会へ

という「3本の矢」の経済政策で、持続的な経済成長(富の拡大)を目指し、

「今後10年間の実質GDP成長率を平均で3%とする」*8

というものでした。結果を見てみると、

第1の矢は十分すぎるほど実行され、もはや弊害が顕著になりつつあるのに対し、第2の矢は最初の1年のみ実施され、2年目には正反対の効果(マイナス財政)となる消費増税が強行されました。

のみならず、補正予算を含めると、安倍首相が

「悪夢」

と称した民主党政権よりも、緊縮財政を強化してしまったのです。そして、第3の矢は、デフレ脱却の兆しすら見えない中で、本来必要のない競争強化の政策が凄まじいスピードで実現しています。

種子法廃止、エネルギー自由化、農協法改正、水道法改正、IR法成立、入管法改正、etc.、

いずれも日本の産業構造を強化どころか破壊するものに他ならず、グローバル競争を強化してデフレ圧力を高める愚策ばかりです。

ここまででも、十分すぎるほどに絶望的な気分にさせられますが、藤井氏はアベノミクスだけだなく、あらゆる政策について非常に厳しい評価をされています。

それは、

「外交の安倍」

と評される外交政策についても、もちろん例外ではありません。

慰安婦合意、北方領土、米国との貿易交渉、韓国への輸出規制、etc.

国民の高い支持を得ているものも、実は取り返しのつかない禍根を残す可能性が高いものが少なくないのです。

ザ・リアルインサイトでは、ご多忙を極める藤井氏に、まだ内閣官房参与だった昨年11月以来となる緊急インタビューを実施しました。クローズドの場であるからこそ、公開の場では踏み込めない赤裸々なご発言を数多くいただいています。

我が日本が置かれている絶望的な状況を改めて認識させられましたが、昨今話題のMMT(Modern Monetary Theory,現代貨幣理論)*9 が突きつける現実が、政治に与え始めている影響も含め、希望の持てる提言もあります。

ザ・リアルインサイト2019年9月号では、以下のコンテンツを配信予定です。

【藤井聡氏インタビュー】

 「令和の政策“大転換”を実現せよ」

 「MMTが突きつける現実は経済政策を変えうるか」

会員の方は是非楽しみにお待ち下さい。

それでは、また。

リアルインサイト 今堀 健司

【参照・引用文献等】

*
全国的に雨で気温上昇は控えめ 1か月ぶりに猛暑日地点ゼロか(ウェザーニュース)

*2
東京の夏は着実に「暑く・長く」なっている 過去140年分の日別平均気温をビジュアル化(2018年7月21日・東洋経済新報社)

*3
ほぼ毎日“運動中止すべき危険レベル” 東京五輪の暑さ対策は「観客の自己責任」というマズさ「あの日傘は凶器にならないか」ってそこなの?(2019年8月23日・文春オンライン)

*4
桜田五輪相更迭 復興軽視の政権象徴(2019年4月11日・東京新聞|TOKYO WEB)

*5
安倍首相、戦後最長の在任へ 23日、佐藤栄作と並ぶ(2019年8月22日・朝日新聞デジタル)

*6
『令和日本・再生計画: 前内閣官房参与の救国の提言』(藤井聡著・小学館新書・2019年)

*7
消費増税に反対した藤井聡・内閣官房参与“退職”の裏に、安倍官邸の陰湿圧力!「赤旗」に出たことで菅官房長官が(2019年1月2日・リテラ)

*8
アベノミクス「3本の矢」(首相官邸ホームページ)

*9
『表現者クライテリオン 2019年9月号』(啓文社書房・2019年)

『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』(中野剛志著・ベストセラーズ・2019年)

『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』(中野剛志著・ベストセラーズ・2019年)

『富国と強兵』(中野剛志著・東洋経済新報社・2016年)