前回もお伝えした通り、日本が世界に誇るべき「国民皆保険」は現在、危機的状況にあるとされています。
私たちが普段なにげなく利用しているこの制度のありがたみを改めて知るには、
同様の制度がない先進国の事例が参考になるかもしれません。
アメリカは、ユニバーサル・ヘルスケア(国民皆保険)の整備を公約に掲げて勝利したオバマ前大統領が主導して導入された
「オバマケア」
の下でも、
二〇一七年に掛け金が最も安いブロンズプランに加入した場合、個人保険の平均免責金額は六〇〇〇ドル、家族保険の平均免責金額は約一万二四〇〇ドルだった。つまり思いがけず医療が必要となったとき、個人保険なら六〇〇〇ドル、家族保険では一万二四〇〇ドルを自己負担しなければならない
『財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生』p.265-266 *
という驚くべき状況にあり、さらに、
緊急時に四〇〇ドルを用立てることができないという人が、国民の四〇%に達する
前掲書p.266 *2
ということです。
つまり、保険に入っていたとしても、病気や怪我で医療を受ける必要が生じた際に60万円以上を自分で負担しなければならないのに、急遽の出費として4万円強すら準備できないという人が、4割も存在していることになります。
その上、現在も医療保険に加入していない人が約2850万人に達しているだけでなく、共和党がオバマケアを骨抜きにしようとしてきたために、医療保険の加入者数は減少傾向にあり、加入している人でも保険の適用範囲が限られるために、必要な治療の費用を払うのが難しいことも多いという
「一部保険の問題」
というものも存在しています。無保険の人と一部保険の人を合わせ、必要な保険に入れていない人は、2019年時点で8700万人に達しているそうです。 *3
このような過酷な医療保険の現状だけが原因ではないでしょうが、アメリカのCDC(疾病管理予防センター)は2018年の報告書で、
アメリカの平均寿命が
「3年連続で低下」
したことを明らかにしています。その大きな原因は、ドラッグ、アルコール、そして自殺とされており、 *4
これらの死は
「絶望死(Deaths of Despair )」
*5
と呼ばれています。
それだけでなく、富裕層と貧困層の間で平均余命の差が大きく、
「年々その差が拡大している」*6
という指摘もあります。
これが、世界最大のGDPを誇るだけでなく、GDPあたりの医療費も世界最高 *7
という「超大国」の現実です。
比較してみれば、日本の状況がいかに恵まれたものであるかを再認識いただけるのではないでしょうか?
しかし、その状況も決して楽観視できるものではありません。
内閣府大臣官房審議官(科学技術・イノベーション担当)の江崎禎英(えさき よしひで)氏は、
厚生労働省の試算によれば、医療や介護に必要な金額は2025年には今より20兆円増加すると見込まれます(中略)仮に不足分をすべて消費税増税で賄うとすれば、2025年には消費税率を20%以上に引き上げる必要があります
『社会は変えられる: 世界が憧れる日本へ』p.8 *8
日本でも近い将来、「お金がないために必要な治療を断念せざるを得ない」、「お金がないために愛する人の死を受け入れなければならない」、「お金がないために医者として助けられる命を見捨てなければならない」、そんな厳しい選択を迫られる日が来ることなります
前掲書p.9 *9
と、現在の制度の危機的状況と、「このまま行けば」何が起こりうるのかを警告されています。
しかし、江崎氏が実行すべきと主張しているのは、決してこのような
「弱者切り捨て」
ではありません。
それどころが、現行制度の問題点を全く別の角度からとらえ、本当に国民を幸せにする医療とは何かを明らかにされた上で、具体的な解決策を提言されているのです。
ザ・リアルインサイト10月号では、2つめのコンテンツとして、
内閣府 大臣官房審議官 (科学技術・イノベーション担当)の江崎禎英氏のインタビュー収録映像
「社会は変えられる〜不可能を可能にしてきた現職官僚に聞く明るい日本の未来(前編)」
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是非、今すぐご確認ください。
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それでは、また。
【参照・引用元】
* 『財政赤字の神話: MMTと国民のための経済の誕生』p.265-266(ステファニー・ケルトン著,早川書房,2020年)
*2 前掲書p.266
*3 前掲書p.265
*4 US Life Expectancy Declines Again, a Dismal Trend Not Seen Since World War I(2018年11月28日・ワシントン・ポスト)
*5 一定数の中年男性は「絶望死」を選択する 米国に次ぎ英国でも “同様の傾向”(2020年3月1日・AXION)
*6 世界の経済危機を救うには「共同行動」が必要だ ノーベル賞学者スティグリッツの強い政府論(2020年4月17日・東洋経済オンライン)
*7 Health expenditure in relation to GDP(OECD Library)
*8 『社会は変えられる: 世界が憧れる日本へ』p.8(江崎禎英著,国書刊行会,2018年)
*9 前掲書p.9
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