先週17日にお届けした「検察庁法改正と“官邸の守護神”」では、コロナウイルス禍の中で強行されようとしていた
「検察官の定年延長」
に大きな関心が集まる以前の経緯を改めてご理解いただくために、以下の動画をご紹介しましたが、もうご視聴いただけましたでしょうか?
翌18日には、大きな動きがありました。読売新聞が朝刊1面トップで
「検察庁法案見送り検討 今国会、世論反発に配慮」
というスクープ記事を掲載(同日午前7時にはネット版にもアップ)したのです。(一部は無料で読めます) *
“ 検察官の定年を延長する検察庁法改正案の今国会成立を見送る案が、政府・与党内で浮上していることが17日、わかった”
という書き出しで始まる同記事には、
“ ツイッター上で著名人らの講義が拡大したほか、検事総長OBらも反対の意見書を法務省に提出するなど反発が広がった”
として、政府・与党内でも懸念が強まっていることが背景にあるとしつつ、
「首相は情勢を見極めてから、最終決断する見通し」
と結んでいたので、まだ確定ではないようでしたが、その後他紙やテレビの後追い報道が続き、同日午後には
「政府は18日、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案の今国会での成立見送りを決定した」 *2
ことが報じられるに至りました。
上記の読売記事では、
“ 改正案は施行日を2020年4月1日と定めており、「秋の臨時国会の成立でも間に合う」(政府関係者) との見方もある”
とも伝えていますので、この問題はまだ、完全になくなったわけではありません。
しかし、昨日20日には
「文春砲」
が炸裂し、
「黒川弘務東京高検検事長は賭けマージャンの常習犯」
であり、自粛要請中の今月1日と13日にも、産経新聞記者宅で深夜まで麻雀に興じていた *3
という驚愕の事実が明らかになりました。
ゲラが出回り、電子版で一部が報じられた20日午後の記者会見で、菅官房長官は早速、
「検察庁法改正案の今国会成立見送りへの影響」
や
「黒川氏の辞職の必要性」
について質問されています。*4
本日発売の『週刊文春』本誌(5月28日号)では、いわゆる「右トップ」記事で、グラビアを含め9ページにわたって疑惑の詳細が書かれています。
日付が変わってすぐにデジタル版を入手して一読したところ、
「これはアウトだな」
という印象を持ちました。賭け麻雀は
“ 判例では賭けるものが金銭であれば、いくら少額でも違法行為となります”
という記事中の弁護士コメント通り、「50万円以下の罰金」も法定されている刑法上の犯罪(第185条)です。
現実には広く行われていることは皆様もよくご存じでしょうが、
“人の不正を暴く人間が、わずかでも 疑いを持たれるようなことをしては、 仕事ができません”
というOBの言葉通り、
法務・検察のトップにならんとしている人物がそうした行為を常習としていたなら到底看過されるべきではないですし、多数の関係者の証言を含め、よく取材された内容の信憑性は高いと思われたためです。
対抗するには、「事実無根」を主張して、法的手段に出るしかないだろうと思っていたところ、
黒川氏自信が辞意を表明したというニュースが出ました。*5
NHK NEWS WEBが速報を出したのが、午前7時31分でしたので、おそらく朝日新聞デジタルが一番早かった(午前5時)のではないかと思います。
が、週刊文春が報じた賭け麻雀の面子には、産経新聞と朝日新聞の記者が含まれていました。文春の記事内容が明らかになった昨日、読売新聞は
“産経新聞と朝日新聞の記者らと賭けマージャンに興じていたとする疑惑” *6
という部分を強調して報じ、産経新聞は文春の取材を拒否したことを明かし*7、朝日新聞は社員が黒川氏との麻雀に参加していたことを「おわび」*8 しています。
各社の報道を読み比べてみるのは面白いのですが、
「検察官の定年延長問題」
は想定外の展開を見せ、
“官邸の守護神”
も思わぬ最後を迎えることになりました。世論の反発により、今国会での採決が見送られていなくても、用意されていた「文春砲」により、黒川氏が撃墜されるタイミングが変わっただけかもしれません。
しかし、検察庁法改正案は、秋の臨時国会以降にまた上程されないとも限りませんし、この問題は引き続き注視が必要だと思います。
『官邸官僚』の著者・森功氏のインタビュー(2019年7月号)では、黒川氏のみならず複数の
“官邸官僚”
の正体に踏み込んでいますので、2019年7月以前に入会された会員の皆様は是非、「バックナンバー」から改めて全編をご視聴ください。
また、マスメディアの報道ではなかなかつかめない様々な真実をお届けしている「ザ・リアルインサイト」最新号では、以下のコンテンツを配信中です。
https://www.realinsight.co.jp/lp/tri/corona2020/letter/
それでは、また。
リアルインサイト 今堀 健司
【引用・参照元】
*2 アングル:検察庁法改正案見送り、与党幹部も「側面支援」の見方(2020年5月18日・ロイター)
*3 黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」(2020年5月21日・文春オンライン)
*4 検事長「賭けマージャン」疑惑で法案見送り? 「全く違います」 菅官房長官 会見詳報(2020年5月20日・毎日新聞)
(全文を読むには会員登録が必要です)
*5 黒川検事長が辞意 賭けマージャン、 法務省調査に認める(2020年5月21日・朝日新聞デジタル)
東京高検 黒川検事長 辞任の意向固める 賭けマージャン報道で(2020年5月21日・NHK NEWS WEB)
*6 黒川検事長が今月、産経記者や朝日社員と「賭けマージャン」か…週刊文春報道
*7 黒川検事長 「賭けマージャン」文春報道(2020年5月20日・産経新聞)
*8 黒川検事長、緊急事態宣言中にマージャン 週刊誌報道(2020年5月20日・朝日新聞デジタル)
*9 『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』(森功著,文藝春秋,2019年)
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