先程、こんなニュースがありましたね。

来年度の「桜を見る会」は中止 菅官房長官(NHK NEWS WEB)*

個人的には

「いきなり中止しなくても……」

と思いましたが、

麻生太郎副総理兼財務大臣はテレビニュースの取材に自身の首相時代の話として、

「総理自身が直接どうのこうのって話だったかね? 俺ん時もあったけど、それは殆どこっちが口差し挟むような話じゃなかったような記憶ですけどね。ちょっとわからん」*2

とコメントしていましたので、

「安倍首相になってから後援会関係者等の支援者の招待が急増した」

という指摘は事実なのでしょう。これが問題視されたきっかけは11月8日の参院予算委での共産党議員の質問でした。そして、焦点は

「首相による桜を見る会の私物化」*3

という部分で、公金を用いて支援者を饗応しているなら、

「公選法違反の恐れがある」*4

ということのようで、“私物化”という表現を用いているのは左派メディアだけではありません。

「長期政権の驕り」と言えばそうなのかもしれませんし、確かに「公選法違反」の可能性も高いと思います。

来年の実施を取りやめることで、問題の沈静化を図りたいのが本音でしょうが、持ち上がってしまった以上は、きちんと究明していただきたいものです。

というのも、様々な問題が発覚してもきちんとその処理や解決がなされずに、有耶無耶なまま立ち消えになってしまうことが多々あるからですが、問題の中には、さらに重大なものも数多く存在しています。

今月19日に承認案が衆院を通過する見込みとなった*5

「日米貿易協定」

もその一つでしょう。安倍首相は9月25日(日本時間)のトランプ大統領との共同声明署名に先立ち、

「両国の消費者あるいは生産者、勤労者全ての国民に利益をもたらす、両国にとってウィンウィンの合意となった」*6

と述べました。しかし、同時にトランプ大統領は

「米国の農家にとって巨大な勝利であり、それが私にとって重要なことだ」

と述べています。

相手がここまで勝ち誇っているのに「ウィンウィン」などということが本当にありうるでしょうか?

今回の主な合意内容は、

「TPPの水準に米国農産物への関税を引き下げさせられた」

上に、

「TPPで合意していた乗用車と自動車部品の米側関税は削減されず」

さらに、

「日本車への追加関税発動可能性は残っている」

というものです。TPPに日本を引き入れておいて勝手に離脱した米政権が、TPPの恩恵のみを勝ち取っていっただけではないでしょうか。

現時点でも日本のウィンがどこにあるのかさっぱりわかりませんが、今後の包括交渉では、

「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」

「米韓FTA」

でも盛り込まれた

「為替条項」*7

の導入も含め、さらに多くの要求がなされることになるでしょう。

これほどまでに対米従属が強化されている現状で、米国の動向が我が日本に与える影響は甚大です。

その米国では現在、トランプ大統領に対する弾劾調査*8 が進んでいます。現段階ではトランプ氏が

「史上初の罷免大統領」

になる可能性は高くはないでしょう。しかし、

「ロシアゲート」

に続く

「ウクライナゲート」

の追及の背景には、米国内で続いてきた根深い対立が影響しています。

その源流には、

賄賂の合法化

というべき重大な変化がありました。

2010年1月21日、連邦最高裁が企業の選挙資金支出制限を違憲とする判決*9 を下したことです。

簡単に言ってしまえば、政治献金の上限が撤廃され、政治家が金持ちの言いなりにならざるを得ない政治制度が完成してしまったことになります。

結果として、オバマ政権の国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏のような、金権腐敗の権化のような大統領候補まで登場することになりました。訴追こそ免れましたが、私用メール問題で明らかになった国務長官時代の不正は、現在の米国内政の混乱にまでつながっているようです。

トランプ大統領をなんとしても弾劾したい勢力は、今後もその動きを簡単に止めることはないでしょう。

弾劾が実現しなかったとしても、来年の大統領選の結果によっては、我が日本は一層困難な状況に追い込まれる可能性があります。悲しい現実ですが、対米従属は今後も強まりこそすれ、なくなることは当面考えにくいでしょう。

この事実から目を背けず、米国で起きている大混乱の行方を注視し続けなければなりません。

ザ・リアルインサイト2019年11月号では、徹底したリアリストの視点を持ち、米国を中心とする国際情勢について常に鋭い分析を続けてこられた国際関係アナリスト伊藤貫(いとう かん)氏の講演会映像を配信しています。

首都ワシントンに30年以上在住され、米国の変化を注視されてきた視点から、日本の報道ではわからない米国内政の驚くべき真実が深く明らかにされています。

会員の方は、是非じっくりとこちらの動画もご視聴下さい。

それでは、また。

日本のよりよい未来のために。

私達の生活、子ども達の命を守るために、ともに歩んでいけることを切に願っています。

リアルインサイト 今堀 健司

【引用・参照文献等】
* 来年度の「桜を見る会」は中止 菅官房長官(2019年11月13日・NHK NEWS WEB)

*2 【報ステ】『桜を見る会』後援会優遇で“私物化”?(2019年11月12日・ANN News)※動画です

*3 支持者を堂々と「税金」で接待する安倍氏の驕り(2019年11月13日・PRESIDENT Online)

*4 桜を見る会“私物化”なら「公選法違反」も(2019年11月13日・日テレNEWS24)

*5 「日米貿易」19日衆院通過へ(2019年11月13日・時事ドットコム)

*6 安倍首相「両国にとってウィンウィン」日米貿易交渉合意(2019年9月26日・朝日新聞DIGITAL)

*7 コラム:日米の為替条項がもたらす「円高余地」=尾河眞樹氏(2019年10月16日・ロイター)

日米貿易協定に署名、為替など今後の「厳しい交渉の扉」(2019年10月8日)

*8 弾劾調査の公開証言、来週は新旧の政権高官8人を召喚(2019年11月13日・CNN.co.jp)

*9 企業献金「上限撤廃」がアメリカを壊す(2010年1月25日・ニューズウィーク日本版)

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