こんばんは。リアルインサイトの今堀です。

昨日、安倍首相が、来年10月の10%への消費税増税を、

「予定通り実施する」

と表明してしまいましたね・・・。

来年10月に消費税10%へ引き上げ、首相表明(2018年10月15日・YOMIURI ONLINE)
※こちらの記事のタイムスタンプは23時10分になっていますが、これは最終更新の時刻と思われます。16時25分に「安倍首相は15日午後の臨時閣議で、消費税率を来年 10月1日から予定通り10%に引き上げることを表明した。」というごく短い一報が配信されていました。以下の日経記事は16時45分です。

首相、消費税増税へ「政策総動員」19年10月予定通り(2018年10月15日・日本経済新聞)

今回の表明については、14日(日)の朝刊で、読売新聞が1面トップで報じたのがスクープだったようです。ネット版のYOMIURI ONLINEも、同日の6時00分に配信されていました。

消費増税、予定通り来年10月実施…首相表明へ(2018年10月14日・YOMIURI ONLINE)

見出しが「…首相表明」となっているところがポイントです。

「表明した」のではなく

「これから表明するんだよ!」

というスッパ抜きが「手柄」なのですね。安倍政権と近しいとされる読売新聞による上記スクープ(?)のニュースソースは、おそらく官邸からのリークでしょう。

公式発表の前に漏らしておくことによって、市場への影響を軽減させたいという思惑も含まれていたのではないかと思います。

そもそも、

「安倍首相は、消費税率を(中略) 予定通り引き上げる方針を固めた。」

という断定は、首相ご本人か周辺関係者が明かさない限りできません。

ここで、個人的な経験を踏まえて、感じたことをお伝えしたいと思います。

ニュースを読み解く際のポイントとして、多少なりともご参考としていただけるかもしれません。

特に某経済新聞に顕著なのですが、新聞記者は「独自記事」が大好きです。

同紙の一面トップを飾る記事は、大企業の経営統合やM&A(合併・買収)、政府・官庁の新方針等が多いのですが、これは、かなりの割合で

「公表前」

の情報です。

正式発表の前に報じるからこそ「スクープ」であり「独自記事」なのですね。

「発表記事」なのか「独自記事」なのかは、最初の一文でわかります。

「◯◯(企業名等)が◯◯する」

「◯◯が◯◯する方針を固めた」

「◯◯の◯期決算は営業利益が前期比◯%増の◯◯になったようだ」

と書いてあれば「独自記事」ですし、

「◯◯が◯◯することを発表した」

「◯◯が◯◯する計画を発表した」

「◯◯が発表した◯期決算では営業利益が前期比◯%増の◯◯になった」

と書いてあれば「発表記事」ですね。

あまり気に留めていない方も多いかもしれませんが、報じる側にとってはとても重大な問題なのです。

発表された事実を垂れ流すだけでなく、独自取材に励むこと自体は、

「ジャーナリズムとして正しい」

姿勢であると言うべきかもしれません。

しかし、これは問題を生じさせることも少なくないのです。特に、上場企業の業績や財政状態を左右する可能性がある情報は、市場の公平性を担保するために公表のルールが定められています。

証券市場が定めるルールと金融商品取引法が定めるものがあり、前者の方がより基準(要件)が厳しい傾向があります。

会社情報の適時開示制度(日本取引所グループ)

企業内容等開示(ディスクロージャー)制度の概要(関東財務局)

特定の報道機関だけがこうした情報を伝えてしまえば、投資判断の材料に深刻な不公平が生じてしまうからですね。

昔勤めていた複数の企業で、広報やIR(投資家向け広報)を担当したことがあります。

上場企業には特定の「担当記者」がいます。大企業では複数人のチームになりますが、私が務めていた企業では専任の記者は概ね一人でした。

定期的に来社しては、

「何か面白い話はありませんか」

と尋ねてきます。

彼らの関心は、ニュースバリューよりも、「独自であるか」の方に強く寄せられているように思えました。

大した内容ではなくても、「独自」なら明らかに紙面の掲載スペースが大きくなります。

さらに、「◯◯日に発表予定です」と伝えれば、それより前に記事にしなければ価値がなくなってしまうため、掲載日すらある程度コントロールできてしまうのです。

大好物は、

  • 決算情報
  • M&A情報
  • 株式情報(増資・分割等)

でした。もちろん、

「公表前」

のものです。「決算短信」「開示文書」そのものを見せてしまうことは、上記のルールに思い切り抵触する大問題ですが、今もかなりのリークが各所で繰り返されているのが現実だと思います。

リークする側の思惑は、簡単に言ってしまえば

「大きく扱ってもらえる」

ことに尽きます。どれだけ多くの紙面に掲載されたかが、広報担当者の評価に直結している会社もありました。

こうして、「持ちつ持たれつ」の関係は続いてきたのでしょう(昔から、「経団連の広報誌」と揶揄されていたほどです)。

ところが、同紙の1面トップ記事は、時に

「大誤報」

となってしまうことも、実は少なくありません。

なぜかといえば、企業の合併話や官公庁の規制等に関する話では、様々な利害関係者が存在するからです。

交渉や調整を有利にしたい勢力が、自らの陣営に有利な情報をリークすることによって、

「既成事実化」

を図ることも少なくないのです。

特に、大株主や経営陣の利害が複雑に絡む合併や経営統合においてのものが顕著ですね。

すぐに思い出せる大きなものだけでも、十数年前には、

「三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループ本社が経営統合」

というものがありましたし、

2011年には

「日立製作所と三菱重工業の経営統合」

2013年には

「川崎重工業と三井造船の経営統合」

というのがありました。

また、これは誤報ではないものの、私が少し関わった上場企業同士の合併交渉が、すったもんだの末にようやく公表の記者会見を開くことになった、まさに当日、

朝刊1面(トップではありませんでしたが)に、

合併の事実がスクープとして掲載されてしまったことがありました。

当事者の企業だけでなく、大手の法律事務所、監査法人、コンサルティング会社、複数の証券会社(投資銀行)が絡んでいましたので、関係者の総人数はかなりのものでした。繰り返された交渉でも、多いときには一度に30名以上が集うこともあった程です。

ですので、

「誰が漏らしたんだ?」

とかなりの騒ぎになって「犯人探し」が始まり、関係者同士が疑心暗鬼に陥るような場面もあったものの、結局有耶無耶で終わってしまいました。

話がだいぶ逸れてしまいましたが、大きな報道がなされる時には、水面下で様々な利害関係者の思惑がぶつかり合っているという雰囲気を感じていただけましたでしょうか。

すみません。
長くなってしまいましたので、次回に続きます。

それでは、また。

今日も皆様にとって幸多き1日になりますように。

日本のよりよい未来のために。私達の生活、子ども達の命を守るために、ともに歩んでいけることを
切に願っています。

リアルインサイト 今堀 健司

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