急に寒くなりましたね。昨日は東京都心がお正月並の寒さ* となり、全国の広い範囲で気温が上がらなかったそうです。

いよいよ年の瀬も近づいてきましたが、“桜を見る会”の招待者に関する報道が続いています。野党の攻撃の主眼は、「反社会的勢力の皆さま」*2 に移ったようですが、菅官房長官は「シュレッダーにかけた」としていた招待者名簿について、

「電子データも復元できない」*3

という認識を示しました。

政府の対応も相変わらずですし、野党の追及もまたピントがずれてきているような気がします。

そうした中、「香港人権・民主主義法案」にトランプ米大統領が署名し、同法が成立した*4

という報道がありました。当然ながら中国は強く反発し、報復措置を示唆しているそうです。*5

本来ならば、我が日本も中国の人権問題には厳しい姿勢を見せる必要があるはずです。しかし、来春には習近平・中国国家主席の

国賓

としての来日が予定されています。これが予定通り実施されるならば、米国との関係に影響が出かねないだけでなく、国際社会の大きな反発を受ける可能性も高いでしょう。

自民党の二階幹事長は、26日の会見で

「国賓待遇でそういう立場の人をお招きするのは当たり前だ」*6

と述べていましたが、これは現在の国際情勢に対し、あまりにも危険な発言なのではないでしょうか。香港の地方議会選挙での民主派圧勝を受け、政府内にも

「習主席の国賓来日への影響を懸念する声」*7

が出ているそうです。

「中国政府が強硬な措置を取れば国際社会の批判が日本にも向きかねない」

というのは実にもっともで、そのような事態が現実となる危険は日に日に高まっているように思われます。国賓での来日となれば、天皇陛下との会見も行われることになりますが、習主席には、天皇陛下を「政治利用」したとされる過去があります。

旧民主党鳩山政権時の2009年12月15日、慣例だった

「1か月ルール」

を破り、天皇陛下の特例会見が国家副主席時代の習氏とセットされました。この慣例破りの経緯を明かした羽毛田信吾(はけた しんご)宮内庁長官(当時)を、

「辞表を提出してから言うべきだ」*8

と激しく批判したのが民主党幹事長だった小沢一郎氏でした。

さらに言えば、1989年の

「天安門事件」

で孤立していた中国が国際社会へ復帰するのを手助けしたのも我が日本です。当時の政府はいちはやく対中制裁を解除し、海部俊樹首相(当時)が訪中しただけでなく、平成4年(1992年)には歴史上初めての天皇陛下(現在の上皇陛下)の訪中も行われています。

「天皇がこの時期に訪中したことは、西側の対中制裁を打破するうえで、積極的な作用を発揮した」*9

と銭其シン(王偏に深のつくり)元副首相が回顧録に記しているそうです。

天皇陛下を政治利用し、重大な人権問題を抱える中国共産党を利するようなことをまたも日本政府は許すのでしょうか?

残念ながら、日本の政治は冷戦後の国際情勢の劇的な変化を見誤り続けてきたように思えます。

日本にはかつて、台湾に密航してまで中国共産党と戦った元将校がいました。1949年10月の金門島における戦い(古寧頭戦役)を指揮し、人民解放軍を殲滅した

根本博(ねもと ひろし)元陸軍中将

がその人です。

結果として中国共産党は台湾奪取に失敗し、厦門(アモイ)と至近距離にある金門島は、現在でも台湾の県となっています。

ノンフィクション作家の門田隆将(かどた りゅうしょう)氏が

『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』*10

で詳述されていますので、ご関心のある方は是非、手にとってみてください。

また、評論家の江崎道朗(えざき みちお)氏も、最新刊の

『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』*11

で、台湾や朝鮮半島をめぐって戦後も続いた中共の工作と、それに対抗してきた日本の政治家らの闘いを、インテリジェンスに関わる歴史研究を元に、詳しく書かれています。

これほどの気概を持った人物は今や望むべくもないとしても、国益を追求すべき政治が、今また大きな過ちを犯しつつある可能性は、決して低くないのではないでしょうか。

ザ・リアルインサイト2019年12月号では、江崎道朗氏が、約1年ぶりに登壇された講演会の収録映像を配信予定です。

テーマは、

「インテリジェンスから読み解く朝鮮半島と台湾有事」

で、

前編は
「コミンテルンの敗戦革命と対米工作」

後編は
「朝鮮半島と中国共産党の対日工作」

となっています。かつての政治家や元軍人の闘いのみならず、知られざる日米関係の真相も語られます。会員の皆様は、是非楽しみにお待ち下さい。

それでは、また。

リアルインサイト 今堀 健司

【引用・参照文献等】

* 東京都心きょう日中は正月の寒さ 気温横ばい(2019年11月28日・tenki.jp)

*2 西村官房副長官「反社の皆さま…」うっかり敬称(2019年11月27日・時事ドットコム)

*3 “桜を見る会” 招待者名簿 「電子データ復元できず」官房長官(2019年11月28日・NHK NEWS WEB)

*4 トランプ氏、香港人権法案に署名 中国は反発(2019年11月28日・BBC NEWS JAPAN)

*5 トランプ大統領署名で”香港法案”成立 中国は報復措置を示唆(2019年11月28日・NHK NEWS WEB)

*6 二階氏「国賓待遇は当たり前」中国国家主席来日(2019年11月26日・産経新聞)

*7 日本政府、中国・習主席来日への影響懸念 香港情勢、国際世論を意識(2019年11月27日・時事ドットコム)

*8 小沢氏、宮内庁長官は「辞表出してから言うべき」特例会見問題で(2009年12月14日・MSN産経ニュース)※アーカイブ

*9 天安門事件30年 中国の国際復帰 手助けした日本 国益確保へ問われる戦略(2019年6月3日・産経新聞)

*10『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(門田隆将著・集英社・2010年)
 
 角川文庫版

*11『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(江崎道朗著・PHP・2019年)

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