おはようございます。リアルインサイトの今堀です。
8月1日より、ザ・リアルインサイト会員専用サイトでは、2018年8月号コンテンツの配信を開始しています。
今月号でお届けしているのは、元京都大学大学院准教授で評論家の中野剛志(なかの たけし)氏講演会の収録映像と、国士舘大学客員教授で批評家の小浜逸郎(こはま いつお)氏のインタビュー収録映像です。
中野氏が登場された2017年8月号のインタビューでは、大好評をいただきました。
今回のご登壇では、
「国力とは何か 経済ナショナリズムの理論と政策」
という高度なテーマを、実に平易に解き明かしていただいています。
今回はその内容からひとつ、重要なご指摘をご紹介します。
「国力論」
は、国家、国民、国力というものの本質を追求することを目指す、同氏の主要テーマです。そのものズバリのタイトルを冠したご著作もおありです。
『国力とは何か ― 経済ナショナリズムの理論と政策』(講談社現代新書, 2011年)
「経済ナショナリズム」
が重要なキーワードですが、これは政治経済学、特に
「国際政治経済学(International Political Economy)」
を考える上での大分類、
- 経済自由主義 →政治は経済に中立であるべき
- マルクス主義 →経済が政治を規定する
- 経済ナショナリズム →政治が経済を決定する
のうち、同氏が最も
「正しい」
と主張されているものです。
その理由は、複雑な社会は理論通りに動かないのが常であり、壮大な理論体系を持つ前二者よりも、不確実な世界の中で政治家を始めとする実践家が創意工夫と試行錯誤を繰り返し、実施してきた経済政策・国家政策そのものだからです。
理論を現実に無理やり適用することによって失敗する実務家は過去から現在に至るまで、数多く存在しています。
現政権(で始まったことではありませんが)の財政政策を始めとする政策が問題だらけである理由も、根底に誤った理論が潜んでいることが最も大きいと言えるでしょう。
しかし、世の中には
「ナショナリズム」
というだけで、拒否反応を示す方も少なくありません。特に朝日新聞などは露骨に嫌悪していますよね。。。
ナショナリズム越える道、まず日本が歴史を直視(asahi.com)
とはいえ、ナショナリズムそのものが危険なわけではありません。
民主主義でも大きな過ちを犯すことはありますし、「戦後」もずっと世界各地で戦争を続けているアメリカ合衆国は建国時から「民主主義国家」ですからね(より正確に言うならば、アレクシ・ド・トクヴィルが警告した「多数者の専制<tyranny of majority>」を認めない「共和主義」が建前ですが)。
そして、左翼が「民主主義」を礼賛しつつ、「ナショナリズム」を嫌悪することの矛盾も、中野氏は鋭く指摘されています。そもそも、簡単に言ってしまえば、
「大事なことはみんなで議論をして決める」
というのが民主主義ですが、議論をして物事を決める「みんな」の範囲は、一体どうやって決めるのでしょう?
民主的に決めるのでしょうか?
いえ、それを決める「みんな」を、民主的に決めることは不可能ですね。
つまり、物事を決める「みんな」の範囲には、納得できる仲間意識が不可欠なわけです。「同胞意識」と呼んでもいいでしょう。そして、現代ではその最大の範囲が「国民」ということになるわけですね。
ナショナリズム(Nationalism)は、「国家主義」と訳されることが多いものの、本当の意味は「国民主義」です。
つまり、ナショナリズムという前提なくして、民主主義は成り立たない、ということですね。
内容のごくごく一部をご紹介致しましたが、全編をご覧いただければ、間違いなく目から大量のウロコを落としていただけることでしょう。
また、
中野氏と小浜氏には、異なるテーマでお話しいただいているものの、重要部分における視点では共通している部分があります。会員の皆様は、その点も踏まえて、是非じっくりとご視聴下さい。
それでは、また。
リアルインサイト 今堀 健司
このメールマガジンをお知り合いにご紹介いただける場合は、こちらのURLをお伝え
下さい。
【ザ・リアルインサイト無料版】
ご登録フォーム