遅い梅雨明けがやっと訪れたと思ったら、早くも
「猛暑」*
が始まってしまったようですね。皆様も是非お体には十分にお気をつけてお過ごしください。
ところで、あなたは
「横田空域」*2
をご存じでしょうか?
ノンフィクション作家矢部宏治(やべ こうじ)氏の
『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』*3
がベストセラーとなったことや、いよいよ開催まで1年を切った東京五輪4にそなえ、羽田空港の国際線発着便数の拡大5が決まったことなどにより、「横田空域」という言葉が報道に登場する機会は増えたようです。
しかし、その実態はまだまだ一般的に認知されているとは言い難い状況だと思われます。
「横田空域」
とは、正式には
「横田進入管制空域(ヨコタ・レーダー・アプローチ・コントロール・エリア,略称:横田ラプコン)」
というもので、東京・神奈川・埼玉・群馬・栃木・新潟・長野・山梨・静岡・福島の1都9県にまたがる、南北で最長約300km、東西で最長約120kmの巨大な空域*6のことです。
この広大な空域は、令和の御代を迎えた現在でも、米軍が管理しています。日本の航空機は事前に飛行計画を提出し、許可を受けない限り、この空域に進入することができません。悪天候等でやむを得ない場合を例外として、計器飛行方式での飛行を行う民間航空機はすべて、この空域を避けて運行しているのです。
簡単に言ってしまえば、我が日本は国土における「制空権」の一部を戦後一貫して米軍に握られていることになります。
さらに恐るべきことに、この空域を米軍が管制していることについての法的根拠すら、国民には明かされていないのです。残念ながら、我が国は「主権国家」の体を成していないと言っても過言ではないでしょう。
こうした異常事態が長きに渡り大きな問題として取り上げられてこなかったばかりか、その存在すらほとんど報道されてきませんでした。
そして、こうした空域の存在の背後には、
「日米合同委員会」
という、知られざる権力構造があります。
日本の独立回復(1952年)とともに、「日米地位協定」にもとづいて設置されたもので、同委員会を構成しているのは、日本側は各省庁の高級官僚なのですが、米国側はほぼ全てが「軍人」という特異極まる組織です。
こちらは、「横田空域」よりももっと一般的には知られていないながら、
「憲法すら超越する」
と言われるほどの強大な権力を有しています。公開されない会議で決定された事項は、建前では
「両国を拘束する」
ものとされながら、事実上日本のみが米側の要求に拘束されているのです。
問題は、「横田空域」にとどまりません。日本国内には米軍が管制している空域がもう2つありました。それが、2010年まで沖縄にあった「嘉手納空域」と、現在も中国・四国地方にある「岩国空域」です。
知識人や言論人には、自嘲気味に
「日本はアメリカの属国である」
という言及をされる方が少なくありませんが、その具体的事例が制空権、つまり航空主権の問題だと言えるでしょう。
個人的には、こうした事態は法治国家として、主権国家として恥ずべきこと、憂うべきことであると思います。
しかし、それよりも前に、一人でも多くの国民が、きちんと知らねばならない悲しい現実が、ここにあります。
ザ・リアルインサイト2019年8月号のインタビューには、
『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』*7
『「日米合同委員会」の研究: 謎の権力構造の正体に迫る』*8
等のご著作があり、この問題を追及してこられたジャーナリストの吉田敏浩(よしだ としひろ)氏が登場され、恐るべき真実を赤裸々に語られます。
会員の方は是非楽しみにお待ち下さい。
それでは、また。
リアルインサイト 今堀 健司
【参照・引用文献等】
*
猛暑日120地点超え 東京や名古屋で今年一番の暑さを更新(2019年7月31日・ウェザーニュース)
*2
「米軍特権」と「密約」の温床、日米合同委員会という闇(2019年7月23日・ハーバービジネスオンライン)
*3
『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(矢部宏治著・講談社現代新書・2017年)
*4
あと1年、五輪へ夢膨らむ…各地でイベント(2019年7月24日・YOMIURI ONLINE)
*5
米政府が横田基地空域の新ルートで合意へ 五輪向け羽田発着便が拡大(2019年1月30日・THE SANKEI NEWS)
大臣会見:石井大臣会見要旨 – 国土交通省(2019年2月1日・国土交通省)
*7
『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』(吉田敏浩著・角川新書・2019年)
*8
『「日米合同委員会」の研究:謎の権力構造の正体に迫る』(吉田敏浩著・創元社・2016年)
このメールマガジンをお知り合いにご紹介いただける場合は、こちらのURLをお伝え下さい。
【ザ・リアルインサイト無料版】
ご登録フォーム