唐突ですが、あなたはクイズがお好きですか?

どこかでクイズを出題されたら、「とりあえず解いてみよう」と思うのは人情ですよね。

私は、テレビ番組こそ見ないものの、ネットや活字媒体等で何らかのクイズを見かけると、本能的に挑戦してしまいます(もちろん、電車内の広告に載っている私立中学の入試問題にも挑戦します)。

スポーツや芸能等、壊滅的に苦手なジャンルもありますが、どちらかといえば、自分はクイズに強い方なのではないかと思っていました。それにもかかわらず、最近読んだ書籍に登場する13問のクイズに挑戦したところ、

わずか2問

しか正解できず、文字通り「衝撃」を受けることになりました(しかも、うち1問は一つだけ突出して正解率が高い問題だったのです。。。)。

この書籍がとても面白かったので、少しご紹介させていただきます。スウェーデンの医師、ハンス・ロスリング氏が、ご子息夫妻との共著として出版した、

『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』※1

がそれで、同書の帯には、

“ 世界100万部超の大ベストセラー、待望の日本上陸!”
“「名作中の名作。世界を正しく見るために欠かせない一冊だ」 ビル・ゲイツ大絶賛、大卒の希望者全員にプレゼントまでした名著”
※2

と書かれています。

個人的に、ビル・ゲイツ氏が推薦する本※3 にはハズレが少ないと思っているのですが、

『FACTFULNESS』

も、例に漏れず、「大当たり」でした。

原著の刊行からそれほど間をおかずに邦訳が出版されたことと、価格も洋書とそれほど変わらないことに感謝したいと思います。

冒頭から、私が2問(正答率15%)しか正解できなかったクイズが登場します。

言い訳がましいですが、ここまで正解できなかったクイズというのは、ちょっと記憶にありません(笑)

13問のうち、以下の2つの問題が帯の裏表紙側に紹介されています。

【質問】
世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
 A. 20% 
 B. 50%
 C. 80%

【質問】
いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
 A. 20% 
 B. 50%
 C. 80%

あなたはどれが正解かわかりましたか?(私は両方間違えました。。。)

特に難しいと感じるような問題でもなく、「ひっかけ」の要素もありませんよね。

それにもかかわらず、このクイズの正解率は世界中で著しく低いそうです。

3択の問題のみなので、全て適当に回答しても、4問は正解できるはずなのに、平均はそれを大幅に下回るだけでなく、

「全問不正解」

という人が、なんと15%もいるとのことです。

著者は、ランダムに回答するよりも平均点が低いことを、「チンパンジーに負けている」と評し、このクイズを

「チンパンジー・クイズ」

と称しています。

それでも、同書を読み進めていくと、それぞれのクイズの答えが自然に頭に入ってくるので、読了すれば、誰でも全ての問題に正解できるようになるでしょう。

高学歴な人やエリートを含め、大部分の人がチンパンジーに勝てない理由も、次々に明らかにされていきます。

それは、

  • 世界は「先進国」と「途上国」に分断されていると思い込んでしまう「分断本能」
  • 恐ろしいものにばかり、自然と目が行ってしまう「恐怖本能」
  • ひとつの例が全てに当てはまると思ってしまう「パターン化本能」

など、

「人間を誤らせる10の本能」

だということで、それぞれの分析と、それを抑えるために必要なことについて、実にわかりやすく説明されています。

私は特に、「世界はどんどん悪くなっていると思い込むネガティブ本能」が強かったようで、これは大いに反省しなければならないと感じました。

とりわけ、

「人口爆発」

については非常に悲観的な考えを持っていたのですが、

  • 増加ペースは既に横ばい
  • 予測の確度は高く、ピークは見えている
  • 解決策は明らかである

という事実が明確になり、とても良い意味での驚きがありました。

また、

  • 減り続けている16の悪いこと
  • 増え続けている16の良いこと

などの非常に興味深いデータも豊富に紹介されており、「思い込みによる思考停止の恐ろしさ」「情報をアップデートし続けることの重要性」を改めて思い知らされた次第です。

高度かつ示唆に富む内容を、これだけ平易な文章で構成できるのは、著者達の力量もさることながら、翻訳や編集の技量の高さも重要なのではないかと思います。

同書では、所得によって世界を4つの段階に分け、平均寿命、乳幼児死亡率、出生率、人口等が各国でどのように変化しているのかが、バブルチャートという美しい独自のグラフや図表等で、実にわかりやすく紹介されているのですが、このグラフは、著者が設立したギャップマインダーという非営利団体のサイトでツールとして公開※4されています。

また、少し前のものになりますが、

「TED Conference」での同氏のプレゼンテーション動画 ※5 でも、10分弱で、人口増加に対する「逆説的」な解決策が提示されています。

同氏は、悲観主義者(pessimist)でも楽観主義者(optimist)でもなく、「可能主義者」を名乗っていますが、それを英語で「possibilist」と言うことも、こちらの動画でわかりました。

そして、「FACTFULNESS」のイントロダクションで紹介されている、同氏の得意技、

「剣呑み芸」※6

も、YouTubeで見ることができます。(こちらは10年以上前の動画ですが、内容は素晴らしいものです)これらの動画をご覧いただくだけでも、目から鱗を落としていただける方は少なくないことでしょう。

同氏は、残念ながら

「FACTFULNESS」

の完成前に、膵臓がんで亡くなられたそうです。

最期に良書を世に送り出してくれたことに感謝しつつ、ご冥福をお祈りしたいと思います。

それでは、また。

【参照・引用文献等】

※1 
『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(ハンス・ロスリング他著,日経BP社,2019年)

※2
Why I want to stop talking about the “developing” world(2018年4月3日,gatesnotes)

ビル・ゲイツ、世界は4つの所得グループで考えるべき—— 先進国、開発途上国の区別は意味がない(2018年4月10日,BUSINESS INSIDER JAPAN)

※3
5 books I loved in 2018(2018年12月3日,gatesnotes)

ビル・ゲイツが選ぶ「2018年に読んだ記憶に残る5冊の本」(2018年12月05日,Gigazine)

My new favorite book of all time(2018年1月26日,gatesnotes)

ビル・ゲイツが「ここ10年で読んだ最高の一冊」を発表、選ばれた「永遠のお気に入り」とは?(2018年1月30日,Gigazine)

※4
GAPMINDER
Tools

※5
ハンス・ロスリング:地球規模の人口増加について

※6
ハンス・ロスリングは貧困に対する新たな洞察を示します(YouTube 日本語字幕が選択できます)
「剣呑み芸」はここから

このメールマガジンをお知り合いにご紹介いただける場合は、こちらのURLをお伝え下さい。

【ザ・リアルインサイト無料版】
 ご登録フォーム