こんにちは。リアルインサイトの今堀です。

これまでにも何度か触れてまいりましたが、来年10月1日には、

10%への消費税増税

が予定されています。正確に言えば、すでに法律上は確定しています。元々、民主党の野田政権時に、民・自・公の3党合意(2012年6月)で

  1. 2014年4月1日から8%
  2. 2015年10月1日から10%

と段階的に増税を実施することが決められました。

その後、安倍政権が、「2」の10%への増税を2回延期した結果、2019年10月に実施されることになったという経緯ですね。

マスコミ報道では、「既定路線で変更がきかない」というような論調が支配的になりつつありますが、現政権は、実際に「2度延期」した実績を持っていますし、政治判断によって、増税の延期又は凍結を決断することは、不可能ではないはずです。

これまで、ザ・リアルインサイトのインタビューや講演会にご登場いただいた有識者の多くが、

デフレ期の増税

の危険性を強調されてきたように、

  • 1997年4月 3% → 5%への引上げ
  • 2014年4月 5% → 8%への引上げ

の過去2回の増税が、どちらも日本経済に深刻な悪影響を与えたことは、疑いようがありません。

ザ・リアルインサイト2018年2月号の講演会にご登壇いただいた、京都大学大学院教授で内閣官房参与の藤井聡(ふじい さとし)氏も、前回の8%への増税以前から、一貫して「デフレ期の増税」に反対してこられましたが、今月、来年の消費増税を阻止するべく、

『「10%消費税」が日本経済を破壊する──今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を』

という書籍を新たに刊行されました。同書は、豊富な統計データを駆使し、現実にどれだけの破壊的な影響が現実にもたらされたのかを明らかにしています。

  • 1997年の消費増税が現在まで続く「長期デフレ」の原因であること
  • その「増税」が、結果的に「税収」を減少させた事実
  • 「財政健全化のため」の増税が、反対に財政をより悪化させたこと
  • デフレの原因をアジア通貨危機、人口減少等に求める誤った言説がいまだに続いている奇妙さ
  • 過去20年以上「世界で日本だけ」が経済成長していないことの異常さ
  • 1995年に世界の21.8%を占めた日本のGDPが、2015年には5.9%にまで激減してしまった現実

などが整理されています。ご一読いただければ、強行されようとしている来年の消費増税が、どれだけ危険であるかを改めてご認識いただけることでしょう。

今回は、その中で印象的だった「事実」を一つだけ、具体的に紹介させていただきます。

それは、

日本の平均世帯は、デフレ不況で1500万円の所得を失った

という衝撃的なものです。総務省が毎年行っている

「国民生活基礎調査」

に拠れば、ピーク時の世帯平均所得は664万円(1994年)でした。

5%への消費増税が実施された翌年は655万円(1998年)でしたが、その後ほぼ毎年下落し続け、8%への増税実施の前年には529万円(2013年)となり、実にピークから「135万円」も減ってしまったのです。この期間には、年間数万円から多いときは20万円も所得の下落が起きていました。

しかし、バブル経済の崩壊後も、ピークの1994年までは、世帯平均所得は伸びており、その後も1997年の消費増税まではほぼ「横ばい」でした。

この当時の水準で、所得が伸びずとも、下落さえしていなかったらどうなったかを想定すると、約20年の間に「平均的な世帯」が失った金額は、累計で

【約1500万円】

にもなってしまうのです。このように、1997年の消費増税が現在まで続く長期デフレの原因となり、我々日本人は、

着実に貧しく

なり続けて来ました。この一事だけを見ても、深刻さが改めてご認識いただけたのではないでしょうか。

消費増税の問題は、それほど破壊的なものですので、今後も引き続きお伝えして行きたいと思います。

また、ザ・リアルインサイト2018年11月号のインタビュー動画

「なぜ自滅を運命づけられた新自由主義を脱せないのか」

でも、政治経済学者の菊池英博(きくち ひでひろ)氏に、消費増税によるデフレ化も含めた「新自由主義」的政策の問題点と、その歴史的な経緯を解き明かしていただいております。

会員の方は、是非ご視聴下さい。

【参考図書】

『「10%消費税」が日本経済を破壊する──今こそ真の「税と社会保障の一体改革」を』(藤井聡著, 晶文社, 2018年)

『新自由主義の自滅 日本・アメリカ・韓国』(菊池英博著, 文春新書, 2015年)

それでは、また。

今日も皆様にとって幸多き1日になりますように。

日本のよりよい未来のために。私達の生活、子ども達の命を守るために、ともに歩んでいけることを切に願っています。

リアルインサイト 今堀 健司

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