おかげさまで、本日4月1日より、当社は9期目に突入いたしました。

これもひとえに、皆様のご支援の賜物です。日頃よりご愛顧いただいております皆様に心より感謝申し上げるとともに、より一層皆様のお役に立てるよう、精一杯努めてまいりますので、今後ともお付き合いのほど、何卒、よろしくお願いいたします。

また、本日4月1日は、いよいよ来月1日に迫った御代替わりの新元号が公表される日でもあります。

そして、残念ながら、事実上の「移民法」に他ならない「改正入管法」の施行日も、本日4月1日です。いきなり今日から移民が激増するわけではないにしても、この拙速な移民政策が、今後各地で様々な問題を発生させることは、避けられないでしょう。

そこで、今回は今後の参考のために、

「勝ち負け抗争」

について、簡単にお伝えしたいと思います。これは、「勝ち組」と「負け組」の争いを表す言葉ではあるのですが、あなたが今イメージされた、

「勝ち組」・「負け組」

とは、おそらく別のものです。

「勝ち組」

というと、今は経済的・社会的な成功者の意味合いで用いられている言葉ですね。しかし、元々は全く違う意味を持つ言葉でした。

それは、

ブラジル日系移民社会で、第二次世界大戦での日本の敗戦を信じなかった人々。ブラジルへの反同化と日本回帰を主張する諸団体が生まれ、敗戦を認識した人々(負け組)を攻撃、迫害した。

『スーパー大辞林3.0』

というものです。

たとえば、なにげなく日本で使う「勝ち組」「負け組」という言葉が、もともとは終戦直後にブラジルの日系社会で使われていたものだと知る人はどれだけいるのだろう

深沢正雪著『「勝ち組」異聞』※1 P.9―10

「勝ち負け抗争」とは、終戦直後、日本の敗戦を認めたくない移民大衆「勝ち組」が、ブラジル政府と組んで力づくで「勝ち組」に敗戦を認識させようとした「負け組」と、血みどろの争いを演じた特異な事件だ

深沢正雪著『「勝ち組」異聞』※1 P.10

私が初めて「勝ち組」という言葉を知ったのは、1988年(昭和63年)より単行本が刊行された、

手塚治虫の『グリンゴ』※2

という漫画によってでした。

「グリンゴ」とはスペイン語で「よそ者」という意味だそうですが、バブル経済期の若手商社マンが、支社長として南米のとある国に赴任し、レアメタルを含む地下資源を求めて、様々な活躍をするも、過酷な運命に翻弄され続ける物語です。

  • 前任者の「現地妻」との刃傷沙汰
  • 現地資産家との強引な交渉劇
  • 権謀術数渦巻く社内政治
  • 反政府ゲリラとの危険な関わり
  • 未開部族の村への逃亡劇
  • エイズの特効薬の発見

等凄まじい展開の後に、主人公一家がたどり着いたのは、日本そっくりの村でした。これは、’80年代末期の南米(国名は定かではないがコロンビアと国境を接する国)に、知られざる

「勝ち組」の村

が残っていたというフィクションですが、小林よしのり氏の

『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論1』※3

では、“日系ブラジル人「勝ち組」が信じたい情報(第21章)”で、史実としての「勝ち負け抗争」を取り上げています。

前出『「勝ち組」異聞』の著者深沢氏は、その書き方に一部疑義を挟んではいますが、全体像を理解するためには、これが一番わかりやすい作品かもしれません。

また、Googleで「勝ち組」と検索すると、1番にヒットするWikipediaの記事※4

にも、短いながら簡潔に経緯がまとめられています。

ブラジル移民は、1908年(明治41年)の第一回移民船「笠戸丸」(冒頭写真の船です)がサンパウロのサントス港に着いたのが始まりでした。その後、1923年(大正12年)の関東大震災発生後に急拡大することになります。

つまり、経済的な苦境にあった多くの人々が、労働力を求めていたブラジルへ渡っていったわけです。現在では200万人ともいわれる日系ブラジル人の方々は、移民とその子孫、ということになります。

元々は、「出稼ぎ」のつもりで旅立った人々は、当然ながら「故郷に錦を飾る」ことを夢見ていたそうです。

しかし、

「ブラジルには金のなる木がある」

という、詐欺同然の宣伝で送り出された人々を待ち受けていた現実は、全く異なるものでした。現実には帰国の旅費すら工面できない方が少なくなかったようです。その上で、第二次大戦に向かう世界情勢は、より過酷な運命をもたらします。

1942年(昭和17年)1月にリオでアメリカ主導の汎米会議が開かれ、アルゼンチン以外は枢軸国に対して「国交断絶」を決議しました。

戦争が始まって、移民たちの大半は帰ることができないなか、同年7月の交換船で大使ら外交官や駐在員だけが帰国してしまい、

「自分たちは棄民にされた」

という思いを強くしたそうです。

そして、日本敗戦までの4年間、短波放送の東京ラジオだけが彼らの情報源でした。繰り返されていた「大本営発表」では日本の活躍だけが伝えられていたにもかかわらず、1945年(昭和20年)8月15日には突如、玉音放送に接することになります。

「敗戦」が何を意味するのかはっきりわからなかった現地の人々は、

「日本がなくなる」

「天皇制がなくなる」

「祖国が消失する」

というとてつもない不安に襲われた結果、自分たちを捨てるように帰国してしまった日本の外交官に代わる権威筋として、退役軍人に期待を寄せるようになります。

そして、終戦直後から

「戦勝デマ情報」

が飛び交い始めました。

これが、後に多くの死者を出し、ブラジル人の対日感情を悪化させることにもつながった、

「勝ち負け抗争」

につながっていきます。

前出の深沢氏は『「勝ち組」異聞』で、政治学者ベネディクト・アンダーソンが『想像の共同体』で論じた「遠隔地ナショナリズム」の具体例として、この問題を論じています。

また、『大衆の反逆』を著したスペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセットは、

私は、私と私の環境である

『ドン・キホーテをに関する思索』

という言葉を遺していますが、これは、「私」が個人として単独で完結するなどということははなく、その本質は、自ら選択したものではない

「環境」

によるものが大部分であるという意味で、先祖、伝統、祖国を背負った存在こそが人間であることを示しています。こうした事実からも、移民を単純な

「労働力」

として見ることの根本的な誤りを学ぶことができるのではないでしょうか。

ザ・リアルインサイト2019年4月号では、政官財の各界で豊富な経験をお持ちの政策コンサルタント、室伏謙一(むろふし けんいち)氏のインタビュー収録映像を配信しています。

  • 拙速な移民政策を実現させた勢力の正体
  • 異例の短時間審議で成立したスカスカの法律
  • 既に多数存在している外国人労働者の実態
  • 住民の半数が中国人の団地
  • 亡国の移民政策を防ぐために必要な対策

会員の皆様は、是非じっくりとご視聴下さい。

それでは、また。

リアルインサイト 今堀 健司

【参照・引用文献等】

※1 『勝ち組異聞』(深沢正雪著・無明舎出版・2017年)

※2 グリンゴ(3冊) Kindle版(手塚治虫著・手塚プロダクション・2014年)

※3 『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新戦争論1』(小林よしのり著・幻冬舎・2015年)

※4 勝ち組 – Wikipedia

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