こんにちは。リアルインサイトの今堀です。

本日、こんなニュースがありました。

トランプ氏、安倍首相に大口献金者の米カジノ参入を要求か(2018年10月11日・産経ニュース)

昨年2月の安倍首相訪米時に、トランプ大統領が、大口献金者であるカジノ大手「ラスベガス・サンズ」の日本参入を、

「直接働きかけていた」

という内容で、米国の非営利報道機関である「プロパブリカ(PROPUBLICA)」の報道を引用したものです。

Trump’s Patron-in-Chief(2018年10月10日・PROPUBLICA)

正直、意外さはあまりなかったものの、随分露骨なことをするものですね。

ラスベガス・サンズのCEO、シェルドン・アデルソン氏は、2016年の大統領選挙時にも、2000万ドル(約22億円)を献金している、トランプ氏の有力な支援者です。首脳会談の翌日の朝食会では、アデルソン氏自身が直接、安倍首相にカジノの話題を持ち出したそうです。

6月22日にお届けした、

“内閣支持率回復と「ポスト安倍」の絶望”

というメールでも、

「不人気なIR法案を押し通そうとする背景には、トランプ大統領の有力支持層でもあるカジノ業者が続けてきた強力なロビー活動があります」

とお伝えしましたが、ロビー活動どころか利害関係者本人が、直接ここまで動いているわけですね。

重要な点は、政府がカジノ解禁の目的を、

多くの外国人客の利用で日本の財政を改善させ、国民生活を向上させると説明してきた

堤未果著『日本が売られる』P.174

にも関わらず、本当のターゲットは

我々日本人

であることです。

2013年8月にアメリカの大手投資銀行シティグループが投資家向けに、日本の日本の3大都市(東京、大阪、沖縄)にカジノができる前提で出したシミュレーションと市場規模予測レポートを見ると、政府の美辞麗句の裏にある、もう一つのカジノ計画が見えてくる。(略)シミュレーションでは、カジノ全体の年間収入は150億ドル(約1.5兆円)。安倍総理の言う通り、もし日本に遊びに来た外国人がこれだけの外貨を落としてくれたら、かなりの税収になるだろう。だがその内訳をみると、外国人2割、残り8割は全て日本人客になっている。シティグループは日本でパチンコ客が1年間に失う平均金額23万円を根拠に、この数字を出しているのだ」

堤未果著『日本が売られる』P.175

(前掲書P.175より) 

「平成30年7月豪雨」

が大きな被害をもたらした直後の7月20日に参院で可決・成立した

「IR実施法」

が、本当は誰のためのものなのかを考えると、改めて暗澹とした気持ちにさせられます。

なお、引用した堤氏の著作でも触れられている「パチンコ」は、世界のギャンブルと比較しても巨大な市場を持っています。

日本は、数十年前から、事実上の

「ギャンブル大国」

でした。

日本生産性本部の『レジャー白書2018』に拠れば、2017年のパチンコ市場規模推計値は、前年比4.3%減の19兆5,400億円で、

「大台割れ」

となったそうですので、

「レジャー白書2018」 パチンコ参加人口は900万人で2年連続の最低値更新(2018年7月20日・遊戯通信web)

かつては「30兆円市場」といわれたパチンコも、いまや

「衰退産業」

なのかもしれません。とは言っても、ラスベガスを凌ぐマカオのカジノも、最盛期の市場規模で、

約5兆円

だったそうですから、日本のギャンブル市場が「超巨大」であることは、間違いないでしょう。

マカオのカジノ、4年連続2ケタ増収 5兆円に迫る(2014年1月3日・日本経済新聞)

そして、マカオのカジノ市場は、習近平氏が推進した「反腐敗キャンペーン」の影響もあり、急激な収縮に見舞われているようです。

カジノ 経済破綻 転換進める(2016年12月5日・しんぶん赤旗)

現在進んでいる「カジノ」の導入とは、根源を辿れば、世界的に縮小傾向にあるカジノ産業の担い手が、

「最後の未開拓市場(last major untapped markets)」

への参入を虎視眈々と狙っているということに他ならないのではないでしょうか。プロパブリカの記事では、日本市場が、

「聖杯(Holy Grail)」

と表現されているほどです。

ここからは思い切り余談ですが、カジノ、特にアジアのカジノで最も人気があるのは、日本の「おいちょかぶ」に似たルールの、

「バカラ(Baccarat)」

です。

香港、マカオ、韓国等のカジノにお出かけになったことがある方は、よくご存じでしょう。バカラはカジノのゲームの中でも最も大金が動くことで知られ、

「カジノの王様(The King of Casino Games)」

とも呼ばれています。

日本人のカジノ好きも、バカラにまつわる様々な事件を引き起こしてきました。

近年では、

「大王製紙事件」

が有名ですね。大王製紙の会長だった創業家の井川意高(いかわ もとたか)氏が、グループ会社から100億円もの不正な融資を受け、マカオやシンガポールのカジノで浪費してしまった事件です(シンガポールのホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」のカジノでもかなり負けたようですが、このホテルのオーナーは、前出のアデルソン氏です)。

井川氏は、会社法違反(特別背任)で有罪判決を受け、収監されました。ご自身が、カジノに深く嵌まり込んで行く経緯を含めた手記を刊行されているのですが、実名を挙げられた芸能人らにとっては、迷惑な本だったのかもしれません。

『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』

また、私の学生時代のニュースとして強く記憶に残っているのが、狛江市長(当時)の失踪事件(1996年)です。「スキンヘッドのバカラ好き」として知られていた人物で、30億円の借金をつくってしまい、現職の市長の身で「失踪」してしまったという事件です。

そして、「ハマコー」こと故・浜田幸一氏もラスベガスのカジノで、4億6000万円を一晩ですってしまったという逸話がありました。これも、バカラによるものです。

余談が長くなってしまいましたが、

「カジノ推進」

は、引用した堤氏の最新刊、

『日本が売られる』

で取り上げられている、我が国にしかけられている「収奪」の一つにすぎません。様々な美辞麗句やごまかしの陰で、既に衰退途上に突入した我が国から、さらに毟り取ろうとする動きが加速しているのです。

ザ・リアルインサイト2018年10月号コンテンツでは、

堤未果氏へのインタビュー
「貧困大国アメリカの実情を我々が知らねばならない理由」
「報道されない“日本が売られる”現実」 

で、水道、農業、医療といった重要な分野で進行している恐るべき現実に、具体的に踏み込んでいます。

会員の皆様は、是非楽しみにお待ち下さい。

【引用図書】
『日本が売られる』(堤未果著, 幻冬舎新書, 2018年)

『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(井川意高著, 幻冬舎, 2013年)

それでは、また。

今日も皆様にとって幸多き1日になりますように。

日本のよりよい未来のために。私達の生活、子ども達の命を守るために、ともに歩んでいけることを切に願っています。

リアルインサイト 今堀 健司

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